2021年5月24日月曜日

コンビの怪

  二階と甘利、高須と河村、安倍と岸、このコンビがどんな関係なのかは皆さん先刻ご承知でしょう。いずれも自民党(保守系)がらみの不祥事の当事者と目されている人たちで二階、甘利は河合案里氏選挙違反事件の自民党本部から支給された1億5千万円の選挙資金の出納をめぐる責任なすり合いのふたり。高須、河村は愛知県知事大村氏リコール事件署名偽造容疑の責任なすり合いの当事者。安倍、岸は政府主導ワクチン大規模接種予約システム不良に関する見当はずれのマスコミ批判を行なったふたりです。

 

 河合夫妻による選挙違反事件は投票依頼に使用された巨額買収資金の出所についていまだに真相究明されていません。買収に使用された資金総額は2千9百万円、買収対象者は地元議員やスタッフ合計100人に上っていますがその資金がどこから出たかについては不明です。問題は自民党から支給された通常の10倍の1億5千万円という高額な資金がどんな性格のもので誰が支給を決定したかという点です。資金には「政党交付金」という税金が含まれていてその税金が買収という違法な使われ方をしたのですから自民党の政党責任は問われて当然です。1回の選挙の2年ほどの間に1億5千万円という巨額を支給されれば「どんな手段を使ってでも当選しろ」という強迫観念に襲われるのは至極当然で、結果最も古典的で確実と思われる「買収」に手を染めたのもこれまた当然の成り行きです。とすると今回の選挙違反事件は自民党の「強迫」という側面も否めませんから河合夫妻をそこまで追い込んだ自民党の誰が主たる責任者だったのかは追求されなければなりません。普通に考えれば党務の総括責任者である幹事長だろうと想像されますし、自民党参議院議員選挙対策本部長も少なからず関与していても不思議はありません。ところがこのふたりが二人ともその責任を否定しているのです。だとすれば1億5千万円という巨額なお金が総括責任者でも選対本部長でもないだれだか分からない普通の職員が出金し支給できるような「政党組織」ということになりますから、そんないい加減な政党に毎年170億円もの巨額な政党交付金を支給することに国民は納得できません。提出を義務付けられている「使途等報告書」の真偽にも正当性が疑われます。野党もマスコミも手を拱いていないでしっかり追求してください。

 

 大村氏のリコール事件署名偽造について絶対に許せない高須氏の発言があります。事件が明るみに出た最初の会見での「私はこんなケチなことは絶対にしませんよ!」ということばです。金に不自由のない自分が、僅かな金で署名を買うようなケチなことはしないということを言ったのでしょうが、署名をカネで買うことは決して『ケチ』なことではありません。絶対に許されない民主主義の根幹を揺るがす重大な冒涜行為です。そうでなくとも『格差』が拡大している現在のわが国において富の多くを「富裕層」と呼ばれる一部の国民が独占しており、その金の力で署名や票を自由にできるようになってしまえば、わが国の民主主義は完全に崩壊してしまいます。高須氏は激情に駆られて思わず口走ってしまったのでしょうが、それだけに彼の本音が迸ってしまったのです。これまでの彼を検証すれば彼が金の力でなんでも好きなようにできるという驕った振る舞いを繰り返してきたことは歴然としています。彼だけではありません、富裕層と目される何人かの人たちの「金力」で一般市民を翻弄する振る舞いは目に余るものがあります(それに翻弄される側も情けないのですが)。

 河村名古屋市長の無責任ぶりにも唖然とします。逮捕された事務局長は彼が推薦した人です。にもかかわらず河村氏は署名偽造に一切の責任を認めようとしません。河村氏は高須氏と共謀したわけですから結果責任を負うのは当然です。

 そもそも今回の発端を再考すれば「あいちトリエンナーレ・表現の不自由展」が彼らの政治信条に反する展示であるから展覧会を中止しろ、という一部世論を背景にした「恫喝」でした。それに伴って投入された「公的資金」を返還しろという要求もしたのですが、彼らの要求が退けられて「リコール」という挙に出たのです。その間に世論を扇動したり大村氏を罵倒するなどもあって、どこか浮ついた『遊び』のようなノリとも受け取られるような感覚で「リコール」を組織し弄んだのです。リコール成立に必要な署名を集めることができないことが明らかになったために「高須先生に恥をかかせてはいけない」という忖度が働いて今回の愚挙に打って出たのでしょうが、高須氏、河村氏はキチンと責任をとるべきです。それが「ケチなことはしない」と大見えを切った人の取るべき「始末のつけ方」です。

 

 政府主導ワクチン大規模接種の予約システム不良に関する安倍元首相と岸防衛相のマスコミ批判は正直言って取り上げるにも値しない「横車」的難くせの仕業と切り捨ててもいいのですが朝日新聞と毎日新聞に「為する」思惑がありそうなのでそれを矯めるために取り上げることにしました。7月末に高齢者の接種を完了するという菅総理の無理筋とも思える「オリンピック戦略」に同調した突然の自衛隊活用大規模接種ですから準備不足によるシステム不良を招来したのも無理からぬところで、架空情報予約だけでなく他にもまだ不都合があるようで充分なシステムチェックを行なえなかった自衛隊も苦しい事情を口にできない無念さがあることでしょう。朝日と毎日だけでなく日経、産経もシステム不良を確認して早期の改修を促しています。実施段階で高齢者に大混乱を与えずに済んだと考えれば自衛隊とすれば感謝こそすれ「逆ねじ」を食らわしてことを隠蔽する積りなどまったくなかったと推量します。今回の安倍、岸両氏の毎日、朝日批判は「贔屓の引き倒し」で自衛隊としてもさぞ迷惑に違いありません。

 

 安倍さんという人はわが国の最高権力者としては資質に問題のある人で、在任中鹿児島に行ったとき地元受けを狙ったのでしょうが「維新の薩長」同様に互いに協力していきましょうと発言してそっぽを向かれたことがありました。教科書歴史では明治維新以来薩長はわが国の近代化に協力邁進してきたように教えられますが、実際は西郷さんが国賊扱いされて以来長州(山口県)嫌いは鹿児島県人の真情なのであって、加えて陸軍の長州に対して海軍の鹿児島は軍隊にあっては犬猿の仲なのです。そうしたわが国の正確な歴史認識のない人の浅薄な歴史観で国民が分断される愚は二度と繰り返したくないのです。

 

 各種の不祥事にコンビで当事者が現われるのは今の政治が「責任者不在」の末期的症状に陥っていることを明かしているのかもしれません。

 

 

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