2021年5月3日月曜日

日本死ね!を覚えていますか

  第三次緊急事態宣言が出ても何も変わらないのをみてそうだろうなと思いました。そしてあのことを思い出したのです

 

 日本死ね!という言葉がネット上を騒がせたのがもう5年も前(2016年)だったことに驚きを覚えます。そしてあの時、言葉づかいが悪いとか、お前がそんなだから保育園にも入れないんだなどと彼女を批判したり罵った人たちは、みな、今、大いに反省しているに違いありません。自分がそうい立場に追い込まれたら言葉なんか構っていられない、心の底から「日本死ね!」と言ってしまうのだということが分かったと。あれからわが国は少しも良くなっていません。それどころか「自助・共助・公助」と時の総理大臣がヌケヌケと公言して弱い人を平気で切り捨てる世の中になったしまってのです。コロナになって、なんのエビデンスも示されずに自粛自粛を求められ満足な補償もないまま「罰則付きの自粛命令」が法律化されて、飲食業をはじめサービス業の人たちがドンドン倒産に追い込まれ、非正規のシングルマザーを中心に失業者が町中に溢れ返っても「生活保護」の申請受けつけは厳重を極め、保護費自体も減額されるというあり様です。5年経ってわが国は私たち一般庶民にとって悪くなる一方です。

 一体「国―国家」というものは我々にとって何なのでしょうか。

 

 戦後私たちは、一生懸命働けば必ず良くなる――生活は豊かになって家族を幸せにできる、万一病気などになって生活が苦しくなれば国が手を差しのべてくれる。そう信じてきました。ところがいつの間にか国は、

「本来の役目である富の再配分や、貧富格差の解消という責任を放棄し、もっぱら私企業に国家事業を丸投げし、そのことによって国家自らの責任を放棄している(『株式会社の世界史』平川克美著/東洋経済新報社/より)」のです。構造改革の名の下に「官から民へ」の大合唱で国鉄も郵政も、そしてついに「医療」も「大学」さえも民営化してしまった、その結果今、医療崩壊とワクチン不足を招いてしまっているのです。

 

 最近巨大IT企業に対する規制がEUをはじめアメリカやわが国でも強化されるようになってきました。取引先より強い立場にあることを背景に、自社に有利な契約をしたり一方的に手数料を引き上げたりすることを規制するもの過度な節税を防ぐ国際的な法人税改革のルール作りをしようとするものです。とくにEUは国境を超えた企業活動によって利益を得るグーグルやアマゾンなどの多国籍企業への対抗策として、売上高に応じて国ごとに課税する「デジタル課税」を導入する案を打ち出し各国の税制の違いを利用して税負担を抑える巨大IT企業に相応の税負担を課そうとしています(多くのIT企業を抱える米国は反対する姿勢を示していますが

 こうした巨大な国際企業の社長―CEOは国(国民国家)をどう考えているのでしょうか。GAFAと呼ばれる5大IT企業(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)の1年間(2020年)の売上高は約8000億ドル(約88兆円)でこれは年間(2020年)GDPの17位オランダと18位スイスの中間に位置します(米国20兆ドル、日本5兆487億ドル)。今年のわが国の総予算は106兆円ですからその巨大さが分かります韓国53兆6千億円)。ここまで巨大化するともはや「世界」が経営を考える時の「場所的」概念の中心となって「国」は世界の構成単位として機能しているのではないかと想像するのです。これはなにも5大企業だけでなくわが国のトヨタでも三菱商事の社長でも同じことでしょう。ということは大企業にとって「国民国家」という概念はかなり「相対的」な存在になりつつあるといっていいのではないでしょうか。

 

 それとは趣を異にしますが中国の新疆ウィグル自治区やチベット、モンゴル、台湾地方の人たちにとって習近平の中国共産党支配の中国に「国民国家」というアイデンティティをもって受け入れることは不可能なのではないでしょうか。民族も宗教も文化・習慣も異なるかれらは長い中国の歴史の中で漢民族の中国の異民族、周辺国として抗争を繰り広げてきました。ある時は漢民族が異民族を統率し、あるときは異民族が中国を糾合して異民族国家の「中国」として歴史にその名を刻んできました。それが第二次世界大戦の終息の過程で蒋介石の台湾民族を中核とした中華民国が戦勝国として中国を代表したのち、毛沢東の中華人民共和国が蒋介石を追放して今日に至っているのです。現在の「中国全土」はこの終息の過程で中国に組み入れられたもので、ある種の戦力でもって暴力的に組み入れられた側面も否めないのです。

 中国という「国民国家」は原理的に相当無理のある国家的枠組みをかかえているのです。

 

 アメリカはトランプの出現で格差が急拡大し国が二分される危機を迎えました。もはや3億3千万人の国家を維持していくのが困難な事態に陥りました。バイデンが後をおそって懸命に立て直し――分断を乗り越えて団結を取り戻し再び「統一国家」として再生しようと、企業課税と所得再分配を強化して「中間層」を創出することで格差と分断を解消し「安定」を取り戻そうとしています。

 

 わが国はアメリカの強要によって構造改革を行い「官から民へ」を急速に達成してデフレからの脱却を図りましたが、成長軌道への復帰は果たさず、格差拡大と分断を招来しています。これは結局アメリカの後追いで「トランプのアメリカ」が今の日本になっているのです。バイデンがしようとしている「企業課税」と「所得再分配」機能の強化を図って「切り捨てられた」人たちを救う方向に国の経営を切り替える必要に迫られています。

 

 「 国民国家の理想は(略)全体として少しずつでも生活の質が向上していゆくこと以外にはない(前掲書)」のです。

 

 

 

 

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