2021年6月7日月曜日

10月開催が唯一の道

  やっとオリンピックに光明が見えてきました。国民が納得して、喜んでオリンピックを迎えることのできる可能性を日本の底力が実現しようとしています。この変化をなぜ当事者は見ないのでしょうか。

 政府が発表した6月1日現在のワクチン接種者数が1千万人を突破しました。高齢者接種が始まって僅か3週間足らず(3日で3週間になります)でのこの実績は予想外の進展で、勿論この中には4百万人以上の医療従事者が含まれていますから高齢者の接種者は600万人足らずですが、この調子がつづくとすれば少なめに見積もっても1ヶ月で1千万人、9月中に4千万人増になり10月には5千万人に達して人口の4割近い人が接種を済ませることになるでしょう。わが国は決められたことは守ろうとする国民性が強いですから欧米と違って壮年層、若者層も接種に積極的にとり組むことが予想できますからひょっとしたら10月には国民の5割近い接種も望めない数字ではありません。現在とは比較にならない「安全」と「安心」を実現できる可能性が高いのです。

 それなのにどうして7月開催にこだわるのでしょうか。

 

 政府や関係者は延期はできないと言い募っていますが実現を阻む要因を一つひとつつぶしていけば決して不可能ではないはずです。なによりも否定的な論調の強い国際世論が味方してくれます。「日本の威信」を賭けて取り組めば必ず10月開催は実現できます。

 まず「政治的要因」です。衆議院議員選挙と東京都議会議員選挙をにらんだ「五輪の政治利用」です。中止ともなればコロナ対策の失敗が政治責任となって与党、東京都政が批判されますから中止は絶対にできないと考えているのです。しかしそんなことは「国民の健康と安全」のためには何ほどものでもありません。いやむしろ、難関を突破して10月に延期できればその政治力は称賛されるはずです。菅総理、小池知事はIOCとの交渉にビビッているだけで、五輪に人生を賭けているアスリートのため、人生1回の五輪観戦を楽しみにしている日本国民のために、安全安心のオリンピック開催に全知全能を傾けて取り組めば必ず道は開けます。日本だけでなく外国選手にとってもこれからの4か月はコロナ禍で満足に調整ができなかった遅れを取り戻す意味で良好な結果をもたらすはずです。7月開催では有力選手の不参加や能力低下があり「東京2020」の価値が低くなって参加や優勝を誇る喜びに傷がつくおそれもあります。10月開催はそういった意味でも「アスリート・ファースト」になるのです。

 会場などの施設や輸送、警備問題が障害となることも延期の理由にされていますが、あと2ヶ月のことです。説得と補償に誠意をもって臨めば日本人です、必ず協力が得られると期待しましょう。

 最難関はIOCです。今の制度ではIOCの片務契約(IOCが絶対的に優位な条件になっているのです)になっていますから延期に伴う賠償金であったり、何よりもテレビ放映権についてアメリカのテレビ局との調整が一筋縄ではいかない困難な交渉になります。しかし「ぼったくり男爵」と揶揄されるIOC上層部の金満体質やオリンピック憲章からはるかに逸脱した商業主義と権威主義にまみれた現在のIOCなら、国際世論を味方につける情報対策を強力にとればIOCの説得は不可能事ではありません。菅さん、小池さん、そしてわが国最高の官僚である武藤さんの熱意と交渉力に期待しましょう。

 そしてなによりもわが国の気象条件を考えれば酷暑の夏季開催は熱中症対策など、決して「アスリート・ファースト」ではなかったのですからその意味でも10月開催が望ましいのです。

 現実の変化を凝視して、どこからみてもベターな10月開催に現状変更しましょう。

 

 ただし根本問題が明らかになっていません。それは昨年何故1年延期になったかという問題です。まったく前途が視界不良であったにもかかわらずなぜ1年になったのか。

 森さん(元東京五輪組織委員会会長)は安倍さん(当時の総理大臣)に「2年延期」を進言したと言われています。それを自分の任期中の開催という個人的な栄誉にこだわった安倍さんが「ワクチンの早期開発と接種可能性」といういわれのない「楽観論」で自説を無理押ししたのです。いまさら言っても詮無いことですが科学的な知識と当事者の広汎な情報を総合する能力が安倍さんにあったらこんな不毛の混乱に陥ることはなかったのです。

 

 ここにきて分科会を五輪運営の諮問機関からはずという動きになって尾身会長が政治的束縛から解放され純粋に医療従事者として、五輪開催について政府関係者の国民に対する「真っ正直な」説得を提言しています。さんざん「専門家の先生のご意見」と政治利用しておきながら、切羽詰まると「科学者の意見」を排除するのですから、今の自民党政治には古い「精神論」で何事も対処しようとする「金と権力」の政治、「金と選挙」の政治しか望めないのでしょうか。

 

 今までは科学的なエビデンスがありませんでしたから延期をIOCにのみこませることは不可能でした。しかし10月まで待てばワクチンの接種が人口の50%近くになることが相当な確かさで実現できる状況になってきた今、これほど「安全」と「安心」を保証するエビデンスはないのですから延期を認めないことになれば国際世論が承知しないでしょう。堂々とIOCに譲歩を迫りましょう。 

 

 ほんの一部のヨーロッパエリートの独占物からオリンピック憲章を実現するオリンピックに改革する必要が待ったなしの段階になっています。

 

 

 

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