2021年8月23日月曜日

認知症は生活習慣病

  最近「精神栄養学」という分野が注目されています。これによるとうつ病や心の病気、そして認知症も食事や栄養と密接に関係していると考えられるのです。

 例えば欧米では魚介類や野菜、オリーブ油などが中心の地中海式食事に比べて、ハムやベーコン、ハンバーガーなどの肉食を中心とした西洋式食事をしている人にうつ病が多いというデータが既に出ています。さらに朝食をきちんと取る人がうつ病のリスクが低いことは世界の多くの地域で確認されています。またうつ病患者は善玉菌(腸内細菌の)が少なく、善玉菌が一定以下だとうつ病の発症確率が高くなるというデータも確認されています。

 こうした例が教えているのは、うつ病や認知症で食習慣が発症のリスク因子として重要であることが疑いようのない事実になっているということです。

 「精神栄養学は心の病気や精神疾患の発症について、栄養の不足や過剰などの関与を明らかにし、食習慣や栄養補充による治療法を開発する新しい学問領域。2000年ころから欧米で研究発表や医療現場での実践が続いている。ここ十数年で急速に研究が進んだ」と帝京大学医学部の功刀浩(くぬぎひろし)教授が語っています。食の西洋化・製品化が進むにつれ、魚や野菜中心の伝統的な食事では自然に取れていた食物繊維やオメガ3系多価不飽和脂肪酸、ポリフェノールなどの栄養素が不足がちになっていることが軽視されているのです。

 こうした栄養素の不足を補うものとして次のようなものが重要です。ビタミン(B、C、D、葉酸)、ミネラル(鉄、亜鉛、マグネシウム)、多価不飽和脂肪酸(EPA、DHA)、食物繊維(善玉菌――乳酸菌やビフィズス菌)、嗜好品(緑茶やコーヒー)、サプリメントなど。

 

 西洋医学偏重の医療がすすめられ部位別の「単科治療」を中心に医療が提供されてきました。しかし近年の研究では、人間の肉体は相互に密接な関係性をもっているのでこれまでとは異なった複数の医科の連携によって治療効果が高まることが明らかになってきました。「精神栄養学」もこれまでは薬物療法と精神療法(心理療法)だけが治療法と考えれてきた心の病気や精神疾患の分野に栄養学的側面からのアプローチを持ち込むことによって新展開を実現した好例です。

 

 いわゆる「老人病」もそうした意味で「単科治療」に適さない病気(?)の一種ではないでしょうか。日本老年医学会は1959年に発足していますが正式に――それまでの任意団体から文部省(現文部科学省)認可の社団法人となったのは1995年ですからまだ30年にも満たない歴史の浅い医学領域です。そもそも「老い」は国際標準では病気として認められていませんでしたが、2018年にWHOの『ICD―11(国際疾病分類)2022年から適用』の「拡張コード」の一つに「aging ―related(加齢・老齢に関する)」が加わりました。これは加齢・老化自体を病気と認定したものではありませんが近いうちに老齢が病気として取り扱われる可能性が実現性を帯びてきたことを示しています。ようやく「老い」のいろいろな治療法が発見・発明される希望がでてきたのです。

 

 高齢で健康な人は大勢います。共通しているのは「適度の運動と規則正しい生活、栄養に偏りのない食生活、ストレスを溜めない」ことです。それ以外に各人各様それぞれ独自の健康増進策をもって長寿を楽しんでいます。以下にわたしが何をやっているかを記してみます。

 私の基本的な考え方は「自分で手当てできることはなんでもやってみる」です。内臓や脳はどうすることもできませんが歯(咽喉、舌も)、眼、皮膚、筋肉・関節(整形外科関係)は努力次第で能力の低下を抑えられる、こうした周辺器官を良くすれば内臓や脳にもいい影響が与えられるのではないかと考えたのです。これは少し考えてみれば納得できることで、歯が痛い、目がかすんでイライラする、こんなことが重なればストレスが高まって胃や神経に悪影響が及ぶ。それが嵩じて病気になるのは自然な流れではありませんか。

 歯は虫歯一つありませんし32本(28本の永久歯と4本の親知らず)健康な状態にあります。それでも65才を過ぎて歯茎に衰えを感じて歯医者さんに相談しました。歯垢の除去と歯磨きの指導を受け、2本の歯ブラシ(普通タイプと隙間用)を使って歯と歯茎の清拭とマッサージを入念にしています。3、4ヶ月に1回受診して要歯磨き部位を指導してもらうことで歯周病予防に心がけています。毎朝インターバル速歩(ひょっとしたらこれが私の健康の礎となっているかのしれません)をしながら喉と舌の運動を行うことも健康にいい結果をもたらしているのではないでしょうか。

 眼は70才ちかくなって夕方かすみ眼で読書がしづらくなり眼科を受診、目薬の処方と眼球の運動をすすめられました。加齢による水晶体の損傷などは防ぎようがありませんが調節機能を司る筋肉は運動で老化を止めることが可能かもしれません。それでも老眼は進行しますから眼鏡の点検、更新は大事です。

 加齢とともに皮膚の乾燥は諸種の異常を発生させます。たとえば踵(かかと)の乾燥と硬化は歩行に悪影響を及ぼしますから保湿剤の塗布で乾燥を防げば歩行、膝、腰にいい効果をもたらしてくれるのではないでしょうか。

 腰、膝、関節などは老化現象として機能低下は否めません。定期的なケア(マッサージなど)で重症化を止めることは運動と共に身体を良好に保つうえで有効だと思います。

 

 病院で治療を受けるだけでなく日常生活でケアできる部位を恒常的にケアする。西洋医学の得意器官の内臓や脳以外の周辺部位をケアして機能低下を防ぐことで身体全体で「老い」に対応する。医学的に認証されていないけれども自分なりに「老い」と意識的に向き合っていくことで身体機能全体を良好に保持し健康寿命を享受したいのです。

 

 高齢者自身の取り組みが「老人病」の治療に役立つかもしれません。工夫して身体と話をしながら毎日を過ごしています。

この稿は「京都新聞2021.8.17」の「心の病気が食生活と関連」を参照しました

 

 

 

 

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