2022年3月7日月曜日

プーチンと金正恩、そして習近平

 プーチンの狂気の暴力がウクライナを侵略しています。まちがいなくこれは『戦争』です。しかも核の使用をちらつかせ原発を攻撃するというのですから完全に『狂って』います。プーチンへの最大限の非難と世界の注視、ウクライナ支援を拡大しつづけていくだけでこの戦争を終結できるのでしょうか。プーチンに矛先を収めさせるにはこの事態に至った根本原因の考察が必要です。

 私たちのロシアに対するイメージは世界を二分していた冷戦時代の『超大国ソ連』のままで停止していないでしょうか。核大国で世界経済をアメリカと二分する超大国というイメージです。確かに今でも核保有に関してはアメリカと覇を競っています――核兵器数アメリカ6185基ロシア6500基、核弾頭数アメリカ1750ロシア1590ですから。しかし国力―GDPは1970年には世界の1位アメリカ31.6%と2位旧ソ連12.7%(当時の3位はドイツ6.3%4位日本6.2%)で世界の半分近くを占めていたのですが2020年にはアメリカ1位約20兆ドルに対してロシアは11位約1兆5千億ドル世界の1.5%に過ぎないのです。これを1人当りのGDPでみると更にロシアの凋落は顕著でアメリカ6万3千ドルに対してロシアは僅かに1万ドルにまで落ち込んでいるのです(日本24位約4万ドル)。ところが軍事費は1位アメリカ7780億ドル2位中国2520億ドル3位インド730億ドルロシア4位620億ドルと今でも世界のトップクラスを維持しています(日本9位490億ドル)。このロシアの軍事費はGDPの4.4%にも達しています。

 こうした現状下のプーチンの胸の内を慮(おもんばか)れば帝政ロシア・ロマノフ王朝の栄光と旧ソ連時代の繁栄の残像が色濃く残っていることはまちがいありません。そのソ連時代の遺産ともいうべき「核大国」という現実、辛うじて保っている世界4位の軍事大国の面目。これに反して世界2位から11位、世界経済の僅か1.5%を占めるに過ぎない国力に低迷している不甲斐なさ、まして国民の豊かさは約1万ドル(これは中国とほぼ同額です)で中所得国も下位に甘んじているのですから独裁者としては何とも歯がゆい限りでしょう。

 

 世界最大の国土――アメリカと中国(この2国はほとんど同じ広さの国土なのです)の約2倍の国土を誇りながら1.4億人の国民を富ます有力な産業もなく今後国力を盛り返す施策も見いだせないでいる『痩せた超大国』の独裁者。頼るは軍事力、特に世界最大で突出した核戦力しかない――この状態は北朝鮮の「金正恩」との相似形を表しています。プーチンをさらに追いつめているのは{NATO(北大西洋条約機構)}の存在です。これは冷戦時代に旧ソ連(連合)に対抗した自由主義陣営の「軍事同盟」です。明らかに「仮想敵国」は旧ソ連。そのソ連が崩壊したにもかかわらずNATOは厳として存在し勢力圏を徐々に拡大、包囲網が迫っているのです。これはロシアにとって決して「気持ちのいい」ものではないでしょう、いや受け入れ難いものです。ウクライナはロシアの兄弟国とプーチン(ロシア国民)は思っていると想像できます。それにもかかわらうNATO不拡大の約束が不履行ななかとうとうウクライナまでが「反旗を翻す」事態に至ってついに『狂気』に走ってしまったのです。

 

 かっての栄光が跡形もなく消え失せてしまい対峙した競争国ばかりか制していたはずの弟国にまで裏切られた「過去の超大国」が理性をかなぐり捨ててガムシャラに起死回生に走ったロシアの独裁者。かって「地上の楽園」と憧れられた栄光が、後ろ盾の旧ソ連を失い「世界の孤児」に貶められ国民には僅か1330ドル(年収)という極貧に喘がせざるを得ない独裁者。振りかざすのは「使えない兵器」のはずの『核兵器』。

 あまりにも似たプーチンと金正恩。プーチンの狂気に金正恩をつづかせないためにはどうすればいいか。

 また国民の所得を倍増させるという目標を掲げGDPの2倍増、3倍増を目論む習近平、この無謀な試みが失敗に帰したとき習近平は狂気には走らないと誰が言えるでしょうか。

 

 アメリカは、NATO諸国と自由陣営諸国は旧ソ連がロシアとして再生したとき、『軍事同盟――NATO』をいかに段階的に解消していくかについて「協議の場」をもつべきだったのです。核兵器削減についても交渉すべきだったのです。どうすれば仮想敵国ロシアを友好国に引き入れるかに知恵を絞るべきだったのです。20年30年なにもせず、没落するロシアを冷ややかに見下ろしていた『むくい』が『今』なのです。

 

 プーチンの狂気をウクライナだけに押し付けて、武器とカネを出して済ますのでは根本的な解決は絶対にないことを知るべきです。

 

 

 

 

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