2022年10月3日月曜日

日本は世界3位ですぞ

  安倍さんの国葬で世界の要人現役トップ級の名がないのを「これが国力が衰えたわが国の現在の実力でしょう」と賢らに解説する連中の多いのに腹が立ちました。日頃は大言を吐く保守系右派の人たちもこれに反発しないのを見て猶更怒りを覚えます。反中嫌韓を愧じることのない「大日本主義者」がなぜ「日本はGDP世界3位の大国ですぞ!」と反論しないのでしょうか。しかも「国民皆保険」で「老齢年金」もカバーしている「範囲」、「支給金額」の両面で世界水準を達成している、こんな国がなぜ「国力の衰えている国」と『卑下』しなければならないのですか。国力世界最高のアメリカは健康保険も年金も不完全でその「格差」に99パーセントの人たちが不満を抱いています。2位の中国は共産党独裁の「専制国家」ですから「基本的人権」は十分に保障されていませんし国民の平均所得も1万ドル(約100万円)を少し超えたところで停滞していて今後上昇する可能性は厳しいと言われています。

 これでも日本は国力の衰えた『衰退国家』と蔑まれなければならないのですか。

 

 日本は1968年GNP(国民総生産)で西ドイツを抜いて世界第2位になりました。当時は今と違ってGDP(国内総生産)ではなくGNPで国家の経済規模を表していたのですが当時わが国はいざなぎ景気で経済は絶好調でした。以降2010年に中国に追い抜かれるまで42年間2位を堅持しつづけたのですから凄いものです。しかも中国に追い抜かれたとはいえ2010年から2021年まで3位を保っているのですから何のかのといわれながら日本は頑張っているのです、なに憚ることがあるものですか。4位以下のメンバーはドイツ、イギリス、インド、フランス、イタリア、カナダ、韓国(ブラジル)で異動ありませんから(6位以下は順に若干の異動があります)世界上位の国力はほとんど不変なのです。(ロシアは2013年の8位を最後に11、12位に低迷しています)。

 世界経済に占める日本経済の大きさ(比率)で国力を計ってみましょう。最も比率が大きかったのは1995年の17.8%です。以降2000年14.6%、2005年10.1%、2010年8.7%、2015年5.9%、2020年5.9%と急激に影響力がかげりましたがそれでも5~6%は保っています。アメリカは近年でも25%程度で安定しており、一方中国は2010年の9.1%、2015年14.8%、2020年17.8%、2021年18.1%と急激に存在感を高めていますが、2022年以後急激に成長が低下すると予想されていますから我が国同様20%手前で失速するかもしれません。

 問題は国民の豊かさを示すと言われている「1人当GDP」の推移です。ランキングでは2000年の世界2位(3万9千ドル)が最高でしたが金額的には2012年の49,175ドル(世界14位)が最高額でした。以後継続して低下の一途をたどり2015年3万5千ドル(27位)と最低を記録しました。現在は若干持ち直して2021年は3万9千ドル(28位)になっています。10年間で約1万ドル――約2割低下したのですから国民の生活は相当苦しい状態に陥っていることが数字に出ています。

 

 世界のGDPに占めるわが国の割合が2位から28位に低下したことをもって「国力低下」とするのならまちがいなく低下しています。問題はこの間に大企業の内部留保が2010年の266兆円から2021年485兆円とほとんど倍増していることです。GDPが500兆円台で横ばいの中で企業と国民の取り分が大企業に偏った配分に移行しているのです。

 これをどうみたらいいのでしょうか。戦後わが国は「護送船団方式」といわれる日本型経済運営で驚異的な経済成長を遂げました。行政が業界(企業)を保護しながら監視・監督するなかで資源と資金を成長目標分野に集中的に活用することで効率をはかるこの方式が、2000年代に入ってグローバル化に対応するため行政の関与を可能な限り排除して「規制改革」と「民営化」に舵を切り、市場の自由な活動に経済運営を委ねる「新自由主義」を打ち出したのです。その結果小泉政権から安倍政権の「失われた20年」となって今日に到っているのです。

 この20年の間あらゆる経済施策を駆使してデフレ脱却を図ってきました。アベノミクスは究極の形で新自由主義的経済運営を行なったのですが結果を出せませんでした。黒田日銀の行なった「ゼロ金利」と市場にジャブジャブお金を供給する「異次元の金融緩和」は究極の「純経済的施策」でしたが物価も経済も上向くことはありませんでした。もはや『経済的』な施策で現状を改革することは出来ないということではないでしょうか。今の「日本の経済・社会システム」ではもう経済成長の「伸び代」は残っていないのです。

 としたら『経済外的』な我が国のシステムに目を向けなければならないということになるのではないでしょうか。経済以外の社会構造でまだ手を付けていない改革や世界的に遅れている分野を改善することが必要なのではないでしょうか。                                                          (つづく)       

0 件のコメント:

コメントを投稿