2023年1月23日月曜日

アメリカってそんなに信用していい国ですか

  年寄りの多くは最近の政治家や企業人に不安を抱いているのではないでしょうか。自衛隊の急速な軍隊化や原発の再稼働・新増設など行政の独断的暴走もありますが、アメリカという国をほとんど『隷属』に近い姿勢で『信用』していることへの不安です。アメリカはまだ250年にも満たない歴史しかもたない『未熟』な「新興国」です。アメリカが「旧大陸」と呼ぶヨーロッパの先進国はアメリカの暴走――たとえば最近でいえばGAFAなどアメリカのIT世界企業の野放図な振る舞いに対しても毅然と「成長に応分な負担」として「課税」を義務付けています。ヨーロッパ先進国以上に不条理な対応をされてきたのがわが国であることは幕末以降の日米関係の歴史を振り返ってみれば明らかです。

 

 幕末アメリカのペリーは4隻の軍艦の威容を浦賀に見せつけ圧倒的な軍事力で威嚇して日米和親条約の強引な締結に追い込みました。朝廷の勅許を得ない幕府の独断専行は尊王攘夷派の激高をよび桜田門外の変によって井伊大老の暗殺とその後の混乱をもたらしたのです。一方ロシアはプチャーチンが1隻の軍艦で下田に寄港し川路聖謨ら日本側外交使節団との国際慣行に則った外交交渉によって日ロ和親条約を締結したのです。

 ABCD包囲網がわが国を太平洋戦争に追い込んだというのは一面的すぎる見方かも知れません。しかし1930年代後半(昭和10年頃)から、海外進出する日本に対抗してアメリカ、イギリス、中国、オランダなどが行なった経済封鎖(石油などの戦略物資の輸出規制・禁止)が日本経済を窮地に追い込みわが国が戦争にかじを切ったのは否定できません。この包囲網を主導したのがアメリカです。

 そして原子爆弾の広島・長崎への投下です。連合国側は1945年7月のポツダム会談においてポツダム宣言に同意していましたから第二次世界大戦終結は共有されていたのです。わが国も終戦の最終的つめに向けて国内調整が進んでおりこの情報は連合国側にも伝わっていたはずです。この状況でなぜアメリカは原子爆弾を使用したのでしょうか。もしこの爆弾の威力が非人間的被害をもたらすものだという認識がアメリカにあった上での原爆投下であったなら絶対に許されるものではありません。もしそれが確たる数値として把握できていなかったから「実験」として軍が使用したとしたら余りにも「非倫理的」です。事実は――アメリカは原爆を武器として戦争に使用したのです。絶対に許されることのない『蛮行』です。韓国がわが国に執拗に「謝罪」を要求するのに比べてわが国はアメリカに対してあまりに「寛容」すぎるのではないでしょうか。

 次は「ニクソンショック」と「米中の頭越し外交」です。1971年8月15日突然アメリカのニクソン大統領がドルと金の交換停止を宣言したのです。それまで兌換紙幣として圧倒的な市場信用を保障していたドルの金による保証が打ち切られたのです。そしてこれをきっかけとして固定相場制から変動相場制へ金融市場が転換することになります。私たちは360円/1ドルという記憶が今でも強く残っていますがこのドル高円安の恩恵の下わが国は戦後の壊滅的破壊から短時日で復興を果たし1955年から1973年の高度成長期を実現できたのです。高度成長が1973年に終わりを迎えていることからも明らかなようにニクソンショックのわが国経済に与えた影響は甚大でした。ニクソンショック、二回にわたる石油危機などの経済危機をわが国経済は国主導の護送船団方式で乗り越えてバブル経済へと進んでいくのですが、製造業の不振を金融経済化によってアメリカ経済が息を吹き返すきっかけになったのは紛れもなくニクソンショックであり、わが国経済がこれによって経済構造を強制転換させられたのは否めません。

 1971年7月15日ニクソン訪中が事前発表されましたが緊密な同盟関係にあるはずのわが国への通知はその僅か数十分前でした。翌年2月に訪中は実現し1979年米中国交は正常化し冷戦の終結へ大きく転換していくのです。田中訪中は1972年9月で日中正常化も進みますが、頭越し外交は日米の同盟関係が米中国交正常化よりも下位にしか認識されていないという事実をあからさまに突き付けたことを鮮明に記憶しています。

 米軍駐留経費の受入国負担の国別比較は両国の力関係(従属度)を反映する一つの指標になると考えられますが、これがわが国の異常に高率な負担になっているのです。日本約75%、韓国、イタリア約40%、ドイツ30%強と突出しています。ここにきて岸田総理が防衛費GDP2%に増額、今後5年間で43兆円増額と表明しましたがこれでわが国はアメリカ国防予算の肩代わりを務めることになりますから、結果としてわが国の対米追従はますます深まりまさに「隷属的地位」になるのではないでしょうか。隷属を表す他の指標として「日米地位協定」があります。わが国とヨーロッパを比較してみると、国内法の適用はわが国以外は「原則適用」となっており、更に管理権について基地内立ち入りに関してわが国以外は原則立ち入り権を確保しています。なぜわが国だけがかくも「隷属的地位」に甘んじなければならないのでしょうか。

 最後に「年次改革要望書」について考えてみます。これは両国の経済発展を推進するために改善が必要とされる規制や制度の問題点を互いに要望しあう制度で2001年からスタートし2009年の鳩山政権で廃止されました。しかし淵源は1993年の宮沢・クリントン時代に遡り廃止されたとはいえいまだに形を変えて復活、存続がささやかれています。小泉総理時代に行われたいろいろな「規制改革」はこれにもとづくものであり、これによって日本経済は金融を中心にアメリカに侵食され「失われた30年」に追い込まれたのです。

 

 ざっと思いつくだけでもこれだけアメリカのわが国に対する裏切りや暴力的介入があるのです。頭越しの米中外交を思う時、アメリカ経済が中国排除を進めた結果経済不振に陥れば再び頭越しに中国との経済関係修復をされる可能性は決してゼロではありません。そのとき中国敵視を打ち出している現政権の政策のままで中国経済抜きの成長を成し遂げることができるのでしょうか。

 

 アメリカは『未熟』な国です。この百年間、覇権はイギリスからアメリカに移りその圧倒的な経済力と軍事力を背景に「世界の警察国家」として振舞いましたが力の外交――軍事介入したほとんどすべての「紛争」は解決に失敗しています。国力低下した今、軍事的同盟関係とブロック経済で対中「勢力均衡」を図ろうとしていますが「破綻」する可能性の方が高いでしょう。

 

 「均衡」ではなく「共同」への「第3の道」へ世界を先導する政治家が世界から、そしてわが国から出てくることを期待せずにはいられません。

 

 

0 件のコメント:

コメントを投稿