もし、琵琶湖の白髭神社前の湖面(私が琵琶湖で一番好きなスポット)や湘南の海(首都圏人の人気海浜)に7万1千本の杭を埋め込んで海底を補強しコンクリートで護岸するという工事をしたら――辺野古で行われつつある工事は地元の人、沖縄県民にとってはそんな感覚ではないでしょうか。そのうえ杭に詰める砂を鹿児島県・奄美大島から調達するというのですから東山(京都の)や日本アルプスを切り崩して砂にするようなものです。大げさに聞こえるかもしれませんが沖縄の人たちの感じ方は多分そうではないかと「想像」するのです。(当初は沖縄で調達する予定だったものがその砂に先の戦争で亡くなった方々の「遺骨」が含まれている可能性が高いという沖縄の方々の反対があって奄美に変更されたのです。しかし奄美の方の感情はどうなるのでしょうか)。
テレビのコメンテーターはよく事件の報道に接して「想像力の欠如」という指摘をしますが、沖縄県・辺野古沖への普天間基地移転についてはその「想像力」をほとんど働かせていません。私も彼らと同じだったのですが一ヶ月ほど前「7万1千本の杭」という文字を目にしたとき、突然工事の「リアリティ」が湧き上がったのです。婿さんの趣味がスキューバ・ダイビングでそのせいもあって孫の絵本に海のものが結構あって海底の美しさに目ざめさせられたことも影響しているのですが、インターネットの「辺野古港周辺の観光ガイド」で見た辺野古の海に「7万1千本の杭」が、深いところなら海底90米まで打ち込まれる様子を想像すると、さらにその上に「コンクリート壁」が建てられるのですから「想像を絶する」光景が展開するにちがいありません。「紺碧」の海が消えて「飛行場」ができるのです。海底には世界的にも貴重な「サンゴ礁」があるのですがそれが無惨に「破壊」されるのです。これは「人間業(わざ)」ではありません、「狂気の沙汰」です。
東京では「明治神宮再開発」をめぐって大騒動になっていますがせいぜい「100年」のことです、こちらは「地球46億年の歴史」ですから重みがちがいます。この差は途方もありません。
中国が南沙諸島の岩礁をコンクリートで埋め立てて軍事基地を構築したという報道に接した時「何と野蛮なことを……」と感じたのですが、いま辺野古で行われているのは、自国の領土を、自国の意志で、破壊しているのですから中国のそれとは根本的に異なります。どちらが異常かと問えば答えは明らかでしょう。(神宮外苑再開発については私も反対です。それは先人たちが100年後神域にふさわしい「杜」となるように願って造った「森の樹木」をまさに完成したその時に「破壊」することに反対するのです。先人の「意志」を後人が「拒否」することが赦されるのかという観点からそれは「不遜」だと考えるからです)。
この工事の完成は2033年、供用はその3年後といわれています。いまの東アジアの緊張がこのまま10年以上「破綻」なく継続するという「仮定」は有効でしょうか。台湾有事がそれまで起こらない可能性は相当低いように思われます。北朝鮮の「暴発」も起こるとすればそんな先のこととは思われません。とすれば工事途中で「有事」は起こることになります。工事は「無駄」になり1兆円近い国税は「無駄づかい」になってしまいます。もしそれまでに緊張が円満に解決に導かれたとしたら完成した「飛行場基地」は「無用の長物」になってしまいます。
そもそもこの工事は完成するのでしょうか。マヨネーズ状の海底といわれています、いまの工程で終わらずにまた追加工事が必要になる可能性はないのでしょうか。1800メートルという滑走路にアメリカは不満を持っているとも言います。この面からの再工事も考える必要がありそうです。
「シーシュポスの神話」――神に背いたシーシュポスが岩石を山頂に運び上げるという罰を受け、運び上げたしりから岩石が転がり落ちて彼は「無限地獄」に陥るという話です。この工事はまさに「シーシュポスの神話」そのものではないでしょうか。
地球の歴史から見るとあまりにちっぽけに思えてしまうのですが「自民党総裁選」を喧(かまびす)しくマスコミが報じています。この調子で9月27日の投票日まで「お祭り騒ぎ」がつづけば「裏金事件」が埋没して直後にあるかもしれない「衆議院議員選挙」では自民党が大勝するかも知れません。マスコミの「倫理観」が問われます。
真っ先に名乗りを上げた小林鷹之氏は49才という若さを前面に打ち出して世代交代を訴えていますが「清新さ」は感じられません。今度の選挙は〈党内問題〉裏金問題の解明と政治資金制度の改正、〈国の問題〉物価高、少子化問題、軍備増強など、二つの争点がありますが小林氏は党内問題は解決済みとしてまったく触れませんでした。もっぱら若さを強調して自民党の再生を打ち出していますが「49才」は一般的には決して若いとは言えません。パリ五輪馬術で銅メダルを獲得したのは「初老ジャパン」でしたが最年長が48才で平均は41.5才でした。わが国の大企業社長の平均年齢は60.5才(帝国データバンク調べ)ですから49才はまあまあ若いかなという程度でとりたてて「若さ」を誇るものではありません。
今度の総裁選で国民がもっとも期待しているのは「裏金問題」の真相解明です。領収書無しで何億円というお金がやり取りされる政治資金の透明化と公正化も是非実現してもらいたいと国民は望んでいます。しかし今の選挙制度ではそれは不可能でしょう。予想された顔ぶれが揃いそうで乱立はまぬがれませんがいずれにせよ一回目の投票で総裁が決定することはなく決選投票になって、議員票が決め手になりますから「脛に傷もつ」センセイ方が真相解明する人に投票するはずもありません。結局小林氏のように「ほっかむり」してうやむやのうちに裏金問題を無いことにしてくれる候補者が「選ばれる構図」が出来上がっているのです。それをいかに「お祭り騒ぎ」で紛らわすかが自民党の総裁選戦略なのです。
素人の私が見抜くのですから大方の人はお見通しのはずですがそうならないのがこれまでの選挙でした。今回も「表紙」が変わっただけで、自民党は変わったと国民の多くが判断するのでしょうか。
いずれにしても46億年の地球の歴史からみれば「ちっちゃい、ちっちゃい」。
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