2011年8月1日月曜日

苛政は虎よりも猛なり

 中国・浙江省で起きた高速鉄道事故の一連の報道に接して、礼記にある孔子の「苛政は虎よりも猛なり」という言葉を思い浮かべた。泰山の近くを孔子が通りかかった時墓の前で慟哭する婦人がいた。どうしたのかと声を掛けると婦人は答えた。「私は舅と夫を虎に殺されました。ところが今度は息子までも虎に殺されてしまったのです」「どうしてこの土地から引っ越さないのか」「苛政がないからです」。
 虎に殺される恐怖よりも苛酷な政治が行われていた孔子の時代、それから2500年経った今も彼の国は変わっていないのだろうか。

 中国は特異な国である。人類は長い歴史の過程で政治と宗教は分立させた方がいいということを学び並立する体制を中世の頃に築いている。日本では京都(天皇制)と鎌倉幕府(政治権力)、ヨーロパではローマ法王と各国の国王の関係である。ところが中国では民間宗教や迷信はあっても政治権力に対抗できるような宗教的権威は成立することがなかった。政治が暴走してもカウンターパワーが機能しないから反対勢力が勃興し暴力的決着がつくまで政治的安定がないのが中国の歴史である。
 共産党独裁がつづいて60有余年、積年の矛盾がマグマ化している。

 堕落し穢れた旧世界(ヨーロッパ)から無垢な人たち―悔い改めた清らかな人たちだけがメイフラワー号で渡ってきて造った国、アメリカ。しかし新世界ゆえに過去の事例を引用し今を決められない、即ち歴史がないから法律と倫理、治安、セキュリティーを自前で賄わなければいけなかった国、アメリカ。倫理の基準が自分たちの中だけにしかない、アメリカという国。
 ドルが基軸通貨となって60年余。ニクソンショックで「金という枷」を外して刷りまくったドルが、「物」の裏付けのない「デリバティブ=金融商品」がアメリカの主力商品とならざるをえなくなり通貨の暴走を防げなくなってしまった―それが『アメリカ国債のデフォルト』の実体である。

 21世紀は間違いなくこの両国が世界を主導していく。
 世界政治のガバナンスシステムは今のままでいいのだろうか。

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