2012年10月1日月曜日

見逃しの三振

 スポーツの秋である。近くの公園の野球場では毎日少年野球が練習に励んでいる。今年はその内の1チームが全国大会で優勝し又そのチームのOBがドラフトに選ばれたりして熱気も一入である。「オラオラオラッ!ボーっと立っとるだけではアカンやないか!バット振らんか、振らなボールに当らへんど!見逃しの三振だけはすんな!」監督の叱咤激励が飛ぶいつもの光景である。

 ジャイアンツがセ・リーグのペナントレースを制した。3年ぶりである。快進撃の要因はいろいろあるが第1は何といっても阿部慎之助捕手の打撃術の飛躍的な成長であろう。川上、長島、王、松井と続く歴代の巨人軍4番打者に比べても全く遜色のない、堂々たる4番打者振りであった。打率(.341)、打点(98)はセ・リーグの1位であるし本塁打(26本)も3本差で2位にいる(9月24日現在)。昨年は個人打撃成績(規定打席以上)24傑にも入らず打率(.292)打点(61)本塁打(20本)であったから正に『大躍進』である。9月23日ヤクルト戦5回2死2塁、7回2死3塁での敬遠はそんな巨人軍4番打者阿部慎之助を象徴するシーンであった。

 阿部選手大変身のキーポイントは何か?それは『見逃しの三振』!
ストライクを見逃す勇気を持てるようになった、阿部選手が独占手記でそう語っている(9月22日報知新聞)。橋上さん(戦略コーチ)は「割り切りが大事」っていう。今まで打てなかった投手に対して「低めを絶対に我慢しよう」とか「見逃し三振はOK」とかね。これまでだったら、三振したくないから振りにいっていた。でも「三振してもいいんだな」って思えるようになり余裕が生まれた。(略)技術的には何も変わってない。
橋上コーチの存在はチーム全体にも大きな影響を与えた。野村ID野球の申し子ともいうべき彼の戦略がチームに浸透したのは苦手阪神能見投手を攻略した時であった。「見逃し三振も許して欲しい」と首脳陣に進言したことで各打者が低めに外れる決め球フォークの見極めを徹底でき、3回で5点を奪いKOした。「一打席を捨てても次につながれば大きい。打者に割り切らせるのが僕の仕事」という彼の指導が昨年323個でリーグ5位だった四球が今年はダントツの427個でリーグ1位となり、じっくりと見極めた効果は昨年0.243だったチーム打率が2割5分8厘でリーグ1位となって表れた(データは9月24日現在、日経9月23日「圧倒・巨人3年ぶりのV」を参考にしています)。

 阿部選手が大躍進を遂げたのは『見逃しの三振』を受け入れる余裕にあった。だからといって少年野球も見逃しOKとならないのは言うまでもないが、有能なプロ野球選手を『大打者』に変身させるためには当然とされてきたセオリーにも挑戦する指導者の斬新な発想が必要なことを阿部選手橋上コーチが示したジャイアンツの優勝であった。

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