2016年1月3日日曜日

勝つことの意味

 競馬ファン一年の総決算「有馬記念」は伏兵ゴールドアクターの勝利で幕を閉じた。二着にはサウンズオブアースが入って奇しくも一昨年の菊花賞二、三着馬での決着となったがしかしこれは考えてみれば当然かも知れない結果といえる。一昨年の菊花賞はトーホウジャッカルが優勝したのだが優勝タイムが3分1秒ゼロのレコードタイムでしかもそれまでのレコードを1秒7も更新する最高レベルのレースであった。あまりに過酷なレースだったのでトーホウジャッカルは半年後の宝塚記念とその2ヵ月後の札幌記念に出走したが体調が戻らず凡走して再び休養に入っている。サウンズオブアースは比較的順調に体調を戻して春二走、秋は勝ちきれないまでも菊花賞のあと最も状態を良くして有馬記念に臨んだ。ゴールドアクターは回復に手間取り10ヶ月後ようやく1000万円下の条件特別からスタートを切りその後1600万円下の条件特別に勝利、更に重賞のアルゼンチン共和国杯2500米を制し三連勝という万全のステップで有馬記念に挑み優勝の栄冠に輝いた。
 潜在力の高い4歳馬二頭が一年を掛けてその能力を順調に伸ばして競走馬の頂点に立ったのだからこの結果は当然なのだがでは二頭の優劣を分けたのは何だったのか。それは『勝利―勝つこと』だと思う。サウンズは菊花賞ではゴールドに先着したがこれまで二勝しかしていない。一方のゴールドは有馬記念までに六勝しておりしかも三連勝で有馬記念に臨んでいる。この差は大きい。スポーツにおいて勝つことと勝てないことの差は決定的である。例え馬―競馬でも勝つことの重要性に代わりないのではないか。この差が有馬記念の勝ち負けに表れゴールドは平成27年度第60回有馬記念優勝馬としてレコードブックに名を刻まれたがサウンズはこの栄誉に浴することはない。この差は決定的である。
 
 テニスの錦織選手が今年ある意味で低迷したのも一昨年の2014全米オープンでマリン・チリッチに敗れたことが大きく影響しているのではないか。ランク下のチリッチに0-3で敗れたのは準決勝で強豪ジョコビッチとの死闘を制した疲れが原因と言われているし多分間違いないと思うがテニスの最高峰―グランドスラム初勝利をを逸したことは彼が飛躍的な成長を遂げる上で重要な分岐点になったのではないか。ベスト10入りを果した錦織が一流クラスの実力に達していることは間違いない。その彼とトップ3との差を決定づけるのはグランドスラムという頂上決戦での勝利の有無以外に考えられない。チリッチとの全米オープンでの敗戦は仕方なかったと片付けることのできない『決定的な敗戦』であったのではないかと彼の今年の戦いぶりを見ていて強く感じた。
 逆に昨年のラグビーワールドカップ2015プールBでの日本チームの南アフリカ戦勝利は『歴史的な勝利』であった。引き分けと勝利にどれほどの差があるかはラグビーを少しでも知っている人なら理解できるはずだ。世界レベルでのラグビー後進国日本を絶望的なまでに印象づけたのはニュージーランド代表のオールブラックスとの対戦である。初めてオールブラックスを知ったのは多分1960年代中頃だったと思うがその彼我の余りの差は戦後スグに米国野球チーム、サンフランシスコ・シールズが来日、日本代表チームがコテンパンにやっつけられた―その敗戦以上の惨敗振りだった。特にフィジカル(肉体)面の差は圧倒的でこれだけは永久に追いつけないであろうと絶望させられた。1987年に2度対戦したが0-74、4-106で敗戦そして第3回W杯では17-145で歴史的大敗を喫した。南アフリカはニュージーランド、オーストラリア、イングランドなどと同じ世界の超一流国でこれまでの日本であれば足元にも及ばない実力差のあるチームである。その南アフリカと接戦しノーサイド(試合終了)直前、敵の反則で得たラストチャンス、ペナルティーキックを入れれば同点。しかしそこで日本チームはスクラムを選んでゴールを狙った、そして絶妙果敢な攻撃で決勝ゴールを上げて勝利!この勝利ほどこれからの日本ラグビーにとって決定的な勝利はない。苦節百年日本ラグビーの歴史において同点で終わればまた明日から勝利を目ざしてのスタートを切らねばならなかった、しかし勝った今は世界のトップチームに伍して頂上を狙う戦闘が可能な第一歩となった。その差は余りにも歴然なのだ。重大な、圧倒的な勝利が南アフリカ戦の勝利だったのだ。
 
 勝つことで得られるものの大きさをスポーツは教えてくれる。しかしそれを人生に当てはめて「勝ち組」負け組みと評価するのは誤りだ。勝負を判定するにはルール=基準が不可欠だが人生には画一的な判定基準はない。敢えて言えば憲法で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」を営んたかどうかだろうがそれとて一面的なものでましてそのための「経済的な豊かさ」などは人生のほんの一部でしかない。それでもって勝ち組と誇るのも愚かなら負け組みと綯(な)え萎(しお)れるのも視野が狭すぎる。
 
 さて戦争はどうだろう。たとえ勝っても国民が疲弊することは歴史の教訓のはずだが?
 
 新年明けましておめでとう御座います。今年もご愛読お願い致します。
 

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