2016年5月9日月曜日

スポーツ二題

 今年の天皇賞(第153回)は北島三郎さん所有のキタサンブラックが平成の天皇賞男武豊の騎乗でめでたく戴冠した。一番人気のゴールドアクターは入れ込みが激しくスタミナをロスして直線半ばで失速、12着に沈んでしまったしまった。ゴールドの敗因は調教の失敗で体重がギリギリまで絞られ馬のテンションが上がりすぎてしまったことによるが、それとは別にひょっとするとこの馬は出張競馬が苦手なのかも知れない。
 それにしても人間の『運』というものの不思議さをツクヅク思い知らされたレースであった。。演歌歌手として頂点を極め最高の『幸運』を手にした北島三郎さん、JRAで3818勝をあげ重賞レース307勝、うちGⅠ70勝という前人未踏の記録を更新し続けている『強運』の名騎手、このふたりがコンビを組んだ途端(2レース目)に京都競馬場の天皇賞3200Mで最適枠の1枠1番を引き当てたのだから勝利のお膳立てはレースの始まる前に調っていたというべきだろう。予想の段階ではゴールドアクターが実力で一枚抜けていると判断していたが枠順発表されたとき、キタサン勝利の確信に近い予感を感じた。一方のゴールドは最悪の8枠17番、調教師の中川公成は開業11年目の中堅だがこれまで重賞勝ちのオープン馬はゴールド以外に現5才牝馬マジックタイム1頭だけという経歴で、ゴールドが昨年暮れの有馬記念を人気薄で優勝したものの天皇賞という古馬最高のレースで1番人気を背負って出馬させるような経験はゼロだった。ノウハウの蓄積のなかった結果は調教をヤリ過ぎて激しい入れ込みにつながり馬の能力を封殺してしまった。ゴールドの騎手吉田隼人は33歳で12年目だがGⅠ勝ちは昨年のゴールドでの有馬記念まで一度もなくGⅡすらゴールド以外では僅かに1勝という戦績では天皇賞7勝の武豊とは雲泥の差といわねばならない。おまけにレース展開の非常に難しい8枠17番になったのだからゴールドアクターにとってはあらゆる面で不利極まる条件となっていたことになる。
 天皇賞の結果を踏まえても実力ではゴールドがうえだと思っている。しかしキタサンブラックは4才、まだまだ成長するに違いないからこれからのこの二頭の勝負に期待が高まる。中川調教師、吉田隼人騎手もゴールドアクターと共に成長して暮の有馬記念で雌雄を決してくれることを楽しみにしている。
 
 元読売巨人軍の笠原将生投手が野球賭博事件での有罪が確実になってきた。笠原投手がこの事件で他の誰よりも罪深いのは彼が父栄一の期待を無残にも裏切ったことにある。しかし、だからこそ、この事件があったのかもしれないのだが。
 笠原栄一は群馬県立佐波農業高等学校(現・群馬県立伊勢崎興陽高等学校出身で1984年のドラフト会議でロッテから1位指名をうけてはなばはしく球界入りを果した。140km/h超の速球を武器とした本格派は往年の名投手でロッテの監督も務めた金田正一の背番号34番を与えられたことでも期待の大きさが分かる。しかし結果は12年間の現役生活で1勝もできずに引退することになる。
 その無念な気持ちが通じたのか息子の将生2008年のドラフト会議で巨人に指名されて入団4年目の2012年5月3日島東洋カープで先発しプロ野球史上初の親子先発を果たすという好運に恵まれる。そのときテレビに映し出され栄一の姿が印象的だった。そして同年9月12日の広島戦で栄一氏の成し遂げられなかったプロ初勝利を挙げ父の『悲願』に応えたことが今となっては将生の最高の「親孝行」だったかもしれない。最速151km/hの速球と多彩な変化球を武器としたが制球が思うにまかせず通算4年で80試合の登板の多くはロングリリーフで使われ勝利数は7勝止まり、父の期待ほどの成績をあげることはできなかった。
 弟の笠原大芽福岡ソフトバンクホークスに所属する文字通りの『野球一家』に育った将生への父栄一の期待は人気球団読売巨人軍に入ってテレビに映し出される機会も多くいや増したことだろう。その重圧に堪えるには弱冠25歳は弱すぎたのか『賭博』に走ってしまった。その罪はこれからの人生で購うほかないが、しかし、この罪は彼だけに負わせてよいものだろうか。
 所属した読売巨人軍の組織としての欠陥を明らかにすることなしに再発防止はできないであろうし、「使用者責任」として監督の責任も不問に付すには影響が大きすぎるのではないか。ところが笠原元選手在籍時の監督原辰徳氏は2015年のペナントレース敗戦の責任を取って意想外の退団、ナベツネこと渡邊恒雄氏もあれほど固執したオーナー職を事件発覚と同時に放棄して引責辞任してしまった(渡邊氏はオーナー職を白石與二郎氏に譲って球団最高顧問という名誉職についていたが実質的オーナーは渡邊氏と世間はみていた)。突然の原辞任であったので後任監督として最有力だった松井秀喜氏に就任を断られ窮余の一策として弱冠41才のヨシノブ―高橋由伸氏が現役引退即監督というドタバタ劇が演じられた。
 原辰徳元監督の責任は追求されずナベツネ氏についても一切が不問に付されるとしたらあまりにも不明朗ではないか。球界の盟主と驕り「紳士たれ!」と選手に誇らせたナベツネ氏の『矜持』はどこへいってしまったのか。笠原ほか選手の糾弾だけという「トカゲの尻尾切り」でこの問題が終息するとしたらNPB日本野球機構の『後進性・閉鎖性』の改革はまた遠退くことになる。
 
 管理を委託されている近くの公園の野球場のゴールデンウイーク後半の予約は5日(木)に2時間あるだけで他は空白になっていた。こんなことはこれまでなっかたことで、少年野球(の親たち)も大人の野球愛好家も『家庭サービス』一辺倒に様変わりしてしまったのか。
 一抹の寂しさを覚えるのは私だけだろうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿