2016年5月30日月曜日

ダービーを楽しむ

 第83回ダービーの枠順が決まった。1枠1番ディーマジェスティ、2枠3番マカヒキ!決まった!この二頭が優勝する!そう直観した。そして天皇賞のキタサンブラックを思った。
 今年の第153回天皇賞はズバ抜けた主役馬不在の混戦模様(実際フタを明けてみればゴールドアクターが一番人気だったが3.8倍で10倍以下が6頭もいてファンの困惑が透けて見えた)。しかし枠順が発表になったとき、1枠1番に入ったキタサンブラックが勝利に大きな一歩を踏み出したことを予感させた。逃げたい同馬にとって内枠、それも1番枠は願ってもない好条件、まして鞍上が名手武豊であれば1番枠は逃げ切り勝利をほとんど手中にしたも同然の幸運であった。演歌で頂点を極めた歌手北島三郎さんの強運を印象づけられた。レースは予想通りキタサンブラックの逃げで始まり最終コーナーを回って直線に入ったときほとんど勝利は確実に思われた。ところが終始キタサンのすぐ後を周っていたカレンミロティックの猛追がはじまった。ゴール前100m附近でカレンが一歩前に突き抜ける。あぁ、キタサン敗れた!そう思われたときキタサンが抵抗する。懸命に食い下がって30m近く両馬が拮抗する。そしてゴール直前、キタサンがグイと鼻面を突き出した。名手武豊はキタサンに余力を残しておいたのだ。天皇賞男の面目躍如の手腕であった。
 ディーマジェスティが1枠1番を引き当てたとき、天皇賞で1枠1番に入った北島さんと名手武豊の強運を思い起こすと同時に、ディーマジェスティに乗る蛯名騎手24回目のダービー挑戦の執念に天が微笑んだと思った。
 
 さぁ、馬券だ。まず1と3の単勝、3連単は1と3で1着2着固定3着に人気馬から穴馬まで手広くいく。よしこれでいい、サトノダイヤモンドが気にかかるが今回のダービーはどうしても『日本人騎手』に勝って欲しいからルメールには遠慮してもらおう。勝つのは執念の蛯名騎手とクラシック5冠(皐月賞、ダービー、菊花賞、桜花賞、オークス)に挑戦するマカヒキの川田騎手だと勝手に決めた。そう決心したのだがエアスピネル=武豊がひっかかる。レース展開は先行して絶好のポジションを占めるであろうエアスピネルがどうみても有利だ。おまけに天皇賞をキタサンで逃げ切った名手であり今年は世界を駆け回って活躍する運気充満の武豊騎手だ。迷った末にエアスピネル5番の単勝と5から1と3の馬連を追加する。
 
 レースがはじまった。14万人近い大観衆の歓声が唸りをあげる中、マイネルハニーが逃げて第1コーナーに各馬が殺到する。そんなに早くないラップ(最初の1000m通過タイム60秒0)であるにもかかわらず縦長でレースが進む。エアスピネルが絶妙のレース運びで前から4、5頭目につけている。そのすぐ後ろにサトノがいる。あっ、その直後にマカヒキがいる、エアマジェスティがつづくが手が動いている。いつもより前すぎる、皐月賞より前すぎる。不安が過(よ)ぎる。
 レース前、パドックから本馬場へ移る途中の地下馬道を通る馬列がテレビに映し出されたとき、顔面蒼白で顔がひきつった蛯名騎手に普段と異なる雰囲気を感じた。
 4コーナーを回って直線半ばを過ぎたとき、エアスピネルがトップに躍り出た。スッーと後続と差がつく。と思った瞬間マカヒキがエアに並ぶ。懸命にサトノが追いすがる。馬上の川田が体を上下に激しく揺らしながらマカヒキを追う、まるで地方の騎手のようだ。マカヒキが出る、サトノが食い下がる、エアが下がる、マジェスティがエアをかわす。ゴール!マカヒキか?サトノか?ゴール板を過ぎたところで川田とルメールが手を握り合っている、ふたりにはどちらが勝ったか分かっているのだ。
 
 1着マカヒキ、2着サトノダイヤモンド、3着ディーマジェスティ、走破時計2分24秒0、単勝400円馬連700円3連単4,600円。マカヒキの単勝400円はおいしい配当だった。負けたが大負けはしなかった。
 蛯名騎手はまたしてもダービージョッキーになり損ねた、ヴェテランでもダービー1番人気の重圧には克てなかったのか?川田騎手はこれで武豊、池添謙一、岩田康誠騎手らにつづいて8人目の5大クラシック完全制覇した。「ダービーオーナーになることは一国の宰相になるよりも難しい」、サトノダイヤモンドの里見オーナーはこう嘆いているのだろうか。
 
 今年のダービーは楽しかった。競馬自体も好勝負だったが大負けしなかったことも幸いだった。三連単のお陰である、射幸心を煽ると危惧されたが結果は逆で少ない資金で競馬を楽しむファンが増えた。
 競馬は楽しい!勝ったらもっと楽しい!

0 件のコメント:

コメントを投稿