2020年3月30日月曜日

近視眼的な、余りに近視眼的な

 東京五輪2020が延期になった途端、東京の新型ウイルス感染者が40人を超えたり(それまでの最高は前日の17人だった)不要不急の外出自粛を要請したりと感染状況が一挙に深刻化した。大幅な数字の変化と行政の深刻な対応要請は、五輪のために感染の現実が『隠蔽』されていたのではないかという「疑惑」を抱かせるし、それまで大阪を中心に「終息への出口戦略」が現実感をもったスケジュールで語られていたのは、「情報の非対称化」によって政権中枢部や首都機関とそれ以外の地方・機関とで「ほんとうの現状」が共有されていなかったせいではないかという疑いを抱く。その後全国各地が東京都との往来を週末自粛要請したことによって東京は事実上「ロックダウン(都市封鎖)」状態になったがそれでもなお、平日の通勤については「自宅就業」を推奨するだけでほとんど規制されそうにないが、もしこれが原因となって「オーバーシュート(爆発的拡大)」につながったりしたらだれが責任を負うのだろうか。
 それにしても、もし「五輪のために事実が隠蔽」されていたとしたら、日頃「国民の生命と財産を守るために最善を尽くしてまいります」と事ある毎に口にする安倍首相は、国民の生命と財産よりも他にもっと重要な「守るべきもの」があったということになる。そういえば、先週末(3月19日)1万6千円台に割り込んだ(16,995円)株価がわずか3営業日で1万9千円台をうかがおうかとする動き示したのも不可解で、新型ウイルスの影響で倒産の瀬戸際に追い込まれている多くの中小企業を救済するよりも、株価を何とか2万円台に戻して政権の人気挽回を図る方が安倍首相にとっては大事なことなのだろうか?また五輪延期前に「学校の4月新学期からの再開」という考えが打ち出されたのは五輪のために感染を「矮小化」する偽装工作だったのではないかと疑いたくなってくる。公立学校は文部科学省の支配下にあるから政権が恣意的に扱っても許されるという驕った思いがあったとしたら、その犠牲になる子どもたちこそいい迷惑だ。
 恣意的で近視眼的な大人の思惑で教育が蹂躙されたとしたらこの国の将来は暗澹たるものになってしまうだろう。
 
 21世紀になってサーズ(SARS2002年)、マーズ(MERS2012年)そして今回の新型ウイルスと3回も経験する新型感染症の世界的な流行は、決して異常なことではなく数年に一回は繰り返される「常態」として取り組むべき世界的課題なのではないか。しかし我が国をはじめ世界各国の認識はそこまでに至っていないように感じられて不安を覚える。
 
 感染症の影響が経済を劇的に下降させる懸念があるがそれへの有効な対策が打ち出される可能性は極めて低い。何故なら、従来の経済の枠組みであれば、金利を引き下げて企業の投資を喚起したり、貨幣の供給量を劇的に増加させて、例えば国民に一律十万円なり二十万円なりを支給して消費を拡大させるという方策がとれたのだが、ゼロ金利だから金利引き下げは不可能だし、日銀の量的・質的緩和がもう十年近くつづいて市場に貨幣が溢れかえっている現状では企業活動への影響はほとんど期待できないうえに、雇用の不安定化と賃金の下降傾向が続いて将来不安を抱えた個人は消費よりも貯蓄に回す可能性が高いから、こうした従来型の景気浮揚策には期待をかけられない。
 アベノミクスの名のもとにデフレ脱却と景気浮揚を狙って目先の効果ばかりを追い求めた政策を繰り返してきた結果、日本の経済システムが今回のような三十年に一度、五十年に一度というような劇的な経済変動に耐えることのできない脆弱なものになっているのだ。
 市場の万能性を信じて「民営化」と「自己責任」を追及してきた「新自由主義的」経済政策の破綻に気づかない限り日本経済の立ち直りは困難であろう。
 
 さらに気がかりなのは「観光立国」という国策への否定的な意見がチラホラ聞かれることだ。特にインバウンドへの過剰依存に対する危険性を過大に評価する論調が少なくないことに懸念を覚える。グローバル化によって世界がひとつになり、工業製品の生産工場が賃金の高い先進国から低い発展途上国に移動するのが世界的潮流となった現在において、先進国は産業構造を高度化させてサービス産業化せざるを得ない状況にあるという認識に基づいて打ち出された「観光立国」という国策に間違いはない。一方で世界の貧困率(世界の貧困ラインは1日1.90ドル)は1990年36%から2015年10%に、貧困層の数は19億人弱から7億人強に減少しておりこの趨勢は今後継続していくだろう。アジア、アフリカ、中南米の貧困国が、中国がそうであったように中所得国に成長していくであろうことは十分可能なシナリオであり、そうなったとき、安全で衛生的で歴史的蓄積の豊富なわが日本は、アジアは勿論のこと世界各国から「魅力ある国」と憧れをもって見られても何の不思議もない。また長期的には「円安傾向」になるであろうからその方面からも日本はインバウンドに有利な条件が整ってくる。ここは何とか踏ん張って『魅力ある日本』を追及すべきではなかろうか。2020年4千万人を達成し2030年6千万人へ、というシナリオは今回の新型ウイルス騒動で頓挫するだろうが、長期的な可能性は決して悲観的なものではない。関連事業者の奮起と中央・地方政府の手厚い補助が望まれる。
 
 最後にわが国の感染者数について、もし今の数字が正しいものとするならその原因はマスクと手洗いにあるのではないか。マスクの予防効果は疫学的には否定的だそうだが今後見直されるにちがいない。また手洗いに関してはわが国ほど習慣的に丁寧な手洗いを躾られている国は少なく、ポンプ式の消毒泡洗剤が各家庭に常備されている国も珍しいのではないか。表面的にはこのふたつが他国と際立って効果の認められる原因だが、専門家に是非調査検討を願いたいのはこの感染症が「有色人種」には感染力、重篤率が低いという傾向はないかということである。まったくの直感にすぎないが直近の印象からなぜかそんな感じを受けている。
 
 突拍子もない方面からのアプローチが意外な真実を導くかもしれない。
 
 
 

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